キヤノンの開発者四人は、2003年の日本写真学会誌にセンサーと周辺技術、画作りの設計を報告した。EOS D60と同じ画素寸法なら約1600万画素にできたが、感度、S/N、ダイナミックレンジを優先し、単位セルを7.4μmから8.8μmへ大きくして、約1110万画素を選んだという。大きな撮像面を、画素数を増やすだけでなく、一画素が受け持つ信号の質へ振り向けた判断である。6公式 日本写真学会/キヤノン開発者EOS-1Dsの開発(日本写真学会誌66巻3号242–246頁)
通常の感度はISO100~1250で、拡張ISO50も備えた。開発論文では、大型ストロボを使うスタジオからの要望に応えた機能と説明されている。低い感度は、照明を組む撮影現場の使い方とも結び付いていた。3公式 キヤノンEOS-1Ds6公式 日本写真学会/キヤノン開発者EOS-1Dsの開発(日本写真学会誌66巻3号242–246頁)
大型センサーの製造では、当時の微細加工装置で作れるよう、必要な部分に三分割露光を採用した。分割の境界を受光領域などから避け、画信号に影響しないよう配慮した。撮像面を大きくするには、その面積をどう加工するかという製造上の工夫も必要だった。6公式 日本写真学会/キヤノン開発者EOS-1Dsの開発(日本写真学会誌66巻3号242–246頁)
EFレンズの光学系へ合わせるため、センサーパッケージは薄くし、短辺側のリードからフレキシブル基板へ面実装した。論文は、CMOSの低消費電力と少ない発熱が薄型化を可能にしたと説明する。既存レンズを同じ画角で使うために、センサーの寸法だけでなく、その周囲の実装も整えたのである。6公式 日本写真学会/キヤノン開発者EOS-1Dsの開発(日本写真学会誌66巻3号242–246頁)
ローパスフィルターには、水晶より複屈折の大きいニオブ酸リチウムを用い、厚さを約六分の一に抑えた。大型の撮像面で問題となる非点収差を抑えながら、モアレ対策と解像力を両立する狙いだった。大きいセンサーへ光を届けるまでの部品にも、薄型化の意味があった。6公式 日本写真学会/キヤノン開発者EOS-1Dsの開発(日本写真学会誌66巻3号242–246頁)
画像の仕上げでは、印刷や拡大後の加工を重視し、初期画像の過剰なエッジ強調を避けた。開発者は、一見したときの解像感より、後から加工しやすい解像力を優先すると説明している。カメラから出た画像の見栄えだけでなく、撮影者が仕上げる素材としての性質を重視した設計だった。6公式 日本写真学会/キヤノン開発者EOS-1Dsの開発(日本写真学会誌66巻3号242–246頁)