ツグミとハチジョウツグミ
特に争うこともなく、餌場をシェアしていました。 交雑した結果のハチジョウツグミ(六畳とか四畳半とか呼ぶらしい)でしょうか。同じ場所で三度見たため、この付近に定着しているようです。 漫画バナシ。 「美味しんぼ」のエピソード「禁断の鳥」では、海原雄山を喜ばせようとした料理店の主が、禁鳥であるツグミの丸焼きを提供し、雄山を激怒させます。 しかし雄山が真に激怒した相手は、ツグミと知らず手に取り口をつけた山岡士郎であり、「愚か者!見てわからんのか!」と罵倒しています。とはいえ、見てわかった海原雄山は、ツグミを食したことがあるからわかったわけであり、また山岡士郎も口にして気づいたことから、過去に食したことがあった、ということになります。 このエピソードが描かれた1980年代後半はもうツグミが禁猟になって20年近くたっていたわけで、当時50代半ばの雄山は合法的に食べた経験があってしかるべきですが、その息子の士郎がツグミを食べたとすれば、それはもう父親である雄山が食べさせたとしか考えられません。 ゆえに、雄山が士郎に激怒したのは、禁鳥を口にしたことではなくて、自分が教えた食材について視覚的に記憶していなかったこと・・ではないかと想像されます。(彼は食育と調理技術の教育にとても厳しい父親であった) 全編を通して、「美味しんぼ」は父と息子の確執とゆっくりとした和解が描かれていますが、この物語の主人公は実は山岡士郎ではなく、海原雄山であり、士郎は狂言回しの立場です。別の言い方をすれば、息子士郎が父雄山にたどり着く旅路の物語でもあります。 同じ構図で描いた先行作品に「F」(六田登)があり、こちらは比較的読みやすい巻数で完結しています。 これらの作品に共通する文法は「初登場時に非常にコワモテな人物は、それ以上に恐ろしくなることはなく、薄皮をはがすように柔和な内面が表現されていく」というもの。父と子の確執は、もともとオイディプス・コンプレックスとして物語の定番パターンであるため、読む人にすんなり受け入れられるものでもありますが、そうでない場合でも、この薄皮はがしパターンは多用され、そのペース配分が作者の腕の見せ所、なのです。