メーカー名 | NIKON CORPORATION |
機種名 | D800 |
ソフトウェア | Capture One 6 Windows |
レンズ | |
焦点距離 | 44mm |
露出制御モード | ノーマルプログラム |
シャッタースピード | 1/500sec. |
絞り値 | F11 |
露出補正値 | -0.3 |
測光モード | 分割測光 |
ISO感度 | 800 |
ホワイトバランス | |
フラッシュ | なし |
サイズ | 1367x2048 (2.06MB) |
撮影日時 | 2015-12-29 23:03:55 +0900 |
「食うために働くのか、働くために食うのか」
・・・・これが、ヨーロッパ、西アフリカ、西インド諸島をつなぐ、悪名高い三角貿易であり、この貿易は
ヨーロッパに莫大な富をもたらし、後に産業革命の原動力となった。
・・・・西インド諸島のプランテーションで、黒人奴隷の血と汗で作られた大量の粗糖は、イギリスに
運ばれ、精製されて純白無垢な砂糖に生まれ変わり、ヨーロッパ中の食卓にのほつた。
砂糖はその白さで奴隷労働の悲惨な現状を覆い隠し、甘さで人々を魅了した。ヨーロッパの人達にとっ
ては砂糖生産現場はあまりにも遠く、それがどのようにして作られているかまで考える余裕もなく、
工場で働き続けた。
生産地と消費地の距離が離れれば離れるほど、消費者は生産者のことを考えなくなり、生産の現場で
何が行われているかに無頓着になる。その究極の姿が、「食のグローバル化」であり、食糧生産の
「ブラックボックス化」だ。その発端はこの時代にあったのである。
砂糖は、短い休憩時間疲労を回復させる魔法の薬だった。事実、砂糖を摂取すると、疲労感はなくなり
空腹感も収まる。このため産業革命期の工場主たちは、休憩時間になると、労働者に砂糖入り紅茶を
提供するようになった。たっぷりと砂糖を入れさえすれば、労働者たちは疲労から回復し、また長時間
働くようになるからだ。工場主にとっては最小限の出費で労働者を管理できた。
しかもその砂糖が極めて廉価で手に入り、栄養価の高い健康食品(当時はそう言われていた)でもあっ
たわけだから尚更である。
そして結果的に、嗜好品である砂糖(糖質)の持つ習慣性・中毒性が、労働者支配の手段として有効に
作用した。
この砂糖を、同じ糖質である米(白米)に置き換えると、明暦の大火からの復興のために全国から集め
られた大工や職人の労働の関係に重なってくる。彼らは故郷では1日に2度の食事をしていて、米は
ほとんど食べていなかった。しかし江戸には米が溢れていて最も入手しやすい食料だった。村ではめっ
たに口に出来なかった米の美味さに驚き、江戸で働くことの幸福を文字通り噛締めていた。
雇用者側は労働者を安い賃金で長時間働かせたいが、労働者側は炭塵労働で高い賃金を手にしたい。
そこに砂糖や米を介在させると労働者側の欲求を上手くすりかえることが出来る。嗜好品である糖質は
労働者に麻薬的に作用し、賃金を得ることと糖質を得ることの境目が曖昧になっていき、どちらが目的
か分からなくなってしまうからだ。
そうなると労働者たちにとって、働くために糖質を欲するのか、糖質が欲しくて働くのかは区別も曖昧
になってくる。これは工場主や幕府にとって最も好ましい情況といえる。米も砂糖も安い商品だからだ。
19世紀のヨーロッパでは砂糖を渇望して労働者が働き、日本では米を食べるために職人たちが働いた。
まさに嗜好品である糖質でしかできない技である。
『炭水化物が人類を滅ぼす』夏井睦著 光文社新書刊より摘出