イマジナリ再び
Exif情報
メーカー名 Canon
機種名 EOS 70D
ソフトウェア Digital Photo Professional
レンズ 180mm
焦点距離 180mm
露出制御モード マニュアル
シャッタースピード 1/395sec.
絞り値 F2.8
露出補正値 +0.0
測光モード 分割測光
ISO感度 200
ホワイトバランス オート
フラッシュ なし
サイズ 2000x3001 (2,651KB)
撮影日時 2019-08-26 01:04:44 +0900

1   S9000   2019/8/26 22:08

 広島市植物公園の睡蓮。定番の、水面映りこみショット。
 立ったりしゃがんだり寝転んだりして、というのがお客さんが少ないのでやりやすかった、夏休み終盤の日曜日。

 休み中、読んでいる小説は司馬遼太郎氏の「花神」。上中下の三巻で、70年代から愛読してます。幕末・明治初頭の軍政家、大村益次郎と、シーボルトの娘、楠本イネの物語で、1977年に大河ドラマにもなりました。(正確には他の司馬作品とのフランケンシュタイン)
 今から10年ほど前、益次郎の出身地、鋳銭司村(現山口市)を仕事で訪れたとき、現地の人と雑談するにあたって「花神」を話題にしたところ、反応が芳しくありません。益次郎とイネのロマンスについては、創作性が濃く、異論が根強いそうです。
 このことは、70年代末に雑誌「歴史読本」の特集「子孫に聞く幕末の偉人100人」で、益次郎の子孫(正確には養子をまじえての子孫で血族ではないはず)が、「司馬先生はよく史料を調べておられ、人柄の描写にも抵抗はない、ただし奥方の実家筋では、イネさんとの関係や、奥方の描写について異論があるようだ」とコメントしていたのを記憶してます。

 司馬氏は、益次郎ゆかりの人物の子孫との会話で「益次郎とイネは恋仲だっただろう」という着想を得て、この物語を執筆しているので、その視点で史料により肉付けをしていた結果が「花神」であり、実際に両者には師弟関係もあったので、絶対そんなことはない、とは言えないのでしょうが、益次郎は劇中でも非常にブ男の朴念仁に描かれており、果たしてこういう男性に絶世の美人が惹かれるのかな、と疑問にも思います。

 司馬氏は劇中で、イネの保護者である二宮敬作をして益次郎に「あなたは女性に対して堅牢なお心をお持ちだから、安心してイネを任せられる(まさか醜男=ぶおとこ、とは言えない)」と言わしめていて、大河ドラマでも、二枚目俳優とは言えない中村梅之助氏を益次郎にあてがわれています。
 一方、イネは浅丘ルリ子さん。栗原小巻さんと並んで、当時、美人女優の代表格。エキゾチックな顔の造りが、ドイツ人(祖法に触れるため、オランダ人と詐称していた)であるシーボルトを父に持つハーフ、という設定がしっくりくる配役でした。

 「なんで地元の英傑の、不倫話を一年かけて見せられなきゃいけないんだ」という意見もわかるのですが、小説、ドラマともに、イネさんと益次郎のシーンはみずみずしく、特にドラマに描かれた、宇和島の浜辺でオランダの唱歌を二人で口ずさむシーンは、素朴な情感にあふれ、学問を絆とする二人の関係をよく演出しています。
(総集編は現在でも視聴可能、このシーンも収録されている)
 また、奥方の琴さんもそんな悪女、悪妻に描かれているのではなく、「よくしたい、よい妻でありたい、という気持ちが強すぎる」「嫉妬心は強いが、全般に田舎ではありふれた、普通の女性」として描かれ、悪い印象はありません。ドラマでの配役も、加賀まりこさんと、これも当時の美人女優です。

 原作小説では、奥方とイネが遭遇するシーンはないのですが(司馬作品全部は読んでないので花神以外にあるのかも)、ドラマには益次郎の死にあたって、両者が対面し、奥方が恨み言を言うシーンがあります。このシーンもヒステリーを起こすのではなく、「私たちは、一人の男の別の側面、いわば別の男を愛していた(だから、恋敵ではない)」と独白して、物語に幕を引く役どころでした。

 司馬氏は、中村梅之助氏の演技にたいそう満足した、と聞いてますが、司馬氏も、中村氏も今は鬼籍にいられました。昭和も昔になりにけり、というやつです。
 

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