いのち木霊す居谷里
Exif情報
メーカー名 Canon
機種名 EOS 5D Mark III
ソフトウェア Digital Photo Professional
レンズ EF70-200mm f/2.8L IS II USM
焦点距離 200mm
露出制御モード 絞り優先
シャッタースピード 1/25sec.
絞り値 F2.8
露出補正値 +0.3
測光モード 分割測光
ISO感度 1000
ホワイトバランス オート
フラッシュ なし
サイズ 2000x1334 (3,086KB)
撮影日時 2018-06-02 13:21:53 +0900

1   ポゥ   2018/6/19 22:27

ちょっと前の写真になります。
私がサワオグルマとカキツバタの季節に2時起きで居谷里に行くのは、
その時間に起きないとゴールデンタイムに間に合わないから、ではありません。
実は、そんな時間に起きなくても、間に合いはするのです。
   全ては、彼らに出会うため。

準夜行性の彼らは、薄明時に湿原に現れる。
だから、私は、彼らより早く居谷里に着かなければならない。
約1時間、暗闇の中で気配をころして薄明を待った後、細心の注意をはらって静かに車を降りる。
ハナノキが見えるポジションに、ほとんど匍匐前進でもするかのように移動する。
果たして彼らがいるのか、いないのかは、そこに立って見なければ分からない。
そもそも、2年前に、一度しか会ったことが無かった。

最高ISO・開放値で、空撮りをする。
ぶれた黒い塊。薄明下の肉眼では知覚出来ない存在を、愛機がとらえた。

息を飲み、さらに姿勢を低くした。
17.6の月齢は迅速に闇を払拭していったが、それでも、たった1分が数時間にも感じられるようだった。
ISO1000・解放・1/25sec。月明かりが許容値に達した。
金色のサワオグルマの絨毯の彼方、ハナノキの下、彼らの姿。
薄い霧の中、ゆっくりとうごめき湿原を横切ろうとしていた。

ほとんど震えるような手で、ピントを合わせ、ままよ、とレリーズを切った。
ミラーアップをした愛機が、僅かに、25分の1秒の作動音を発した。
刹那、目が合った。
ピィ-ッ!という甲高い声が、小鳥たちのさえずりを一瞬かき消した。
美しい命達が、自らが発した木霊と同調しながら、居谷里の森へと吸い込まれていった。

2   Ekio   2018/6/20 07:12

ポゥさん、おはようございます。
シャッターを押すまでの緊張感が伝わって来るコメントとお写真ですね。
研ぎ澄まされた互いの感覚がシャッター音で繋がる刹那は感動的でしょうね。

3   ポゥ(スマホ版)   2018/6/20 07:29

解放ではなく、「開放」の間違いでした。
いゃあ、お恥ずかしい・・・

4   ポゥ(スマホ版)   2018/6/20 07:50

解放ではなく、「開放」の間違いでした。
いゃあ、お恥ずかしい・・・

5   エゾメバル   2018/6/20 21:43

なんとも美しくてしかも緊張感のある作品です。
この作品を撮るための準備に要したエネルギーと、自分で作ったイメー
ジをものにする真剣な姿勢に頭が下がります。
朝の3時半頃でしょうか、幻想的な世界(これだけでも十分な作品にな
っています)に緊張感のある鹿を入れて見事な作品に仕上げています
ね。素晴らしい。お見事です。

6   Booth-K   2018/6/20 23:34

執念の様に強い思い、この原動力に感服です。気象状況、開花、そして鹿と、全ての条件がそろうのを待つなんて、気が遠くなります。
幻想的な風景に自然に溶け込む野生の命の光景、素晴らしいです。
眼の前に見つけたものを撮っている自分と違って、これ程信念を持って撮られているのは、頭が下がります。真似したいけど、なかなか・・。(汗)

7   masa   2018/6/23 09:47

野生動物写真家は500、800、1000mmくらいのレンズでシャッター音の届かぬ遠方から狙います。
200で暗いうちから息を殺してこの瞬間を待つなんて!
カメラマンの鏡です。

8   ポゥ   2018/6/23 23:02

皆様、コメントをいただきありがとうございます。
ニホンジカは、農林業的に見れば「害獣」でありますが、
ここ居谷里に現れるそれは、ちょっとした神々しささえ感じるような気がします。
毎回毎回、おそらくいはしないのだろうな、という諦念の中に、
「しかし、行ってみないことには分からない」というちょっぴりの期待を原動力として撮影に向かいます。
ISO25600で空撮りをした時、「そこには無いはずの黒い何か」が写っていた時の興奮は、今でも忘れられません。
今度はまた来年、ハナノキが真っ赤に咲く頃に、さらなる興奮を求めて会いに行きたいと思っています。

>野生動物写真家は500、800、1000mmくらいのレンズでシャッター音の届かぬ遠方から狙います
これについては、まず私が野生動物写真家ではなく、あえて言うなれば「居谷里写真家」であること、
500超の焦点距離で彼らをとらえたとしても背景に居谷里らしさが無いようでは元の木阿弥であることから、現時点では「200は短い」とは思っていません。
特に、絵のバランスでは、この写真でいう右上側から左上側にかけての奥行き感は外せない要素です。
仮に別のシステムが手に入るとしたら、ニーニーか、試しにヨンニッパが欲しいと思うくらいです。
ゴーヨンでは、多分絵的に望ましくないのと、一段分の暗さが命とり
(この日は相当明るい月光と快晴とがあった上でやっとこの設定でしたから)
になるので、不要、というか、用を成さないような気がします。
なので、持っている100-400とか150-600は、このシーンの撮影では
まず使用候補にすら入ってきません。
ですから、私としては「これしかないから」という諦念かっらではなく、
「これで撮る」という決意とイメージを胸に抱いて70-200を装着し
未明の湿原に足を踏み出すのです。

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