150-600mmレンズ 作例

ガジェットとしての「幻の多角形コーナリング」

ガジェットとしての「幻の多角形コーナリング」

 アート作品的な扱いとして展示されているポルシェ911カレラRS。いわゆる「ナナサンカレラ」。排気量は2.7リットルですが、ボディサイズは今日の5ナンバーサイズであり、驚くほどコンパクトに見えます。実質的な後継車であるポルシェ930ターボは、タイヤハウスの張り出しが大きくボリューミーになり、格段に迫力が増しています。  さて、漫画バナシ。 「ガジェット」とは、今日の商品用語としては携帯電話やゲーム、デジタルカメラを含む「目新しい小型の電子機器」とされています。漫画においては「ストーリー展開上の重要な小道具、仕掛け」転じて広義には「ストーリー展開の根幹をなす、勝負や危機の打開、登場人物の出会いや運命に関わる必須の概念」となります。例えば、「ドラえもん」は未来の秘密道具全てがガジェットですが、ストーリー展開の根幹をなすガジェットは「タイムマシン」ということになります。  カメラマンを主人公にする漫画では、死別した先輩や親兄弟の遺したカメラやレンズがガジェットになることも多く、この点、デジタルカメラは日常品としてのガジェットから抜け出ておらず、作中の小道具としてのガジェットになるには至っていません。  「サーキットの狼」では、一番目につくガジェットは、このポルシェ911カレラRSのようなクルマですが、レーサーの出世物語でもあるため、主人公は次々にクルマを乗り換えてゆく必要があり、ルパン三世の13世石川五右衛門が使う名剣流れ星に相当する、一貫した愛機というのは設定しにくいものです。  なお、レース漫画は「レースのステージが上がるほど漫画としては人気が落ちる」傾向がありますが、しげの秀一氏は代表作「頭文字D」において、「峠レースから一歩も進まない」とステージを固定させることで、この傾向を打破するとともに、主人公の愛車を終始一貫させることにも成功しています。  「ストーリー展開の根幹をなす、勝負や危機の打開、登場人物の出会いや運命に関わる必須の概念」という広義のガジェットは、超能力や超科学も含まれます。最近逝去された松本零士氏が宇宙戦艦ヤマトのSF設定に用いた「波動エネルギー」もその最たるもので、主人公側にとって主たるエネルギーで最大の武器でもある一方、敵方も使うため、主人公側に危機をもたらす存在でもあります。スポーツ漫画では「巨人の星」の魔送球や超人的制球力がこれに近く、この場合は「現実にはありえないが、作中世界にあらかじめ仕込んでおくことで劇中の奇跡的な展開を楽に説明できるようになる」あるいは「現実世界と虚構世界を橋渡しする」魔法のアイテムになるわけです。  「サーキットの狼」では、「幻の多角形コーナリング」などのコーナリングテクニックは、全くの虚構ではなく、現実に存在する概念を誇張することで少年漫画らしい勝負ガジェットに昇華させています。「多角形コーナリング」の元ネタは、AUTOSPORT1971 年3月号記事「超えたドライバーの極秘テクニックシリーズ第3弾~北野元の多角形コーナリング」と思われ、作者池沢氏は「サーキットの狼」続編で、この記事の挿絵写真を引用しています。池沢氏は、この多角形コーナリングを、「あしたのジョー」におけるトリプルクロスカウンターのような必殺技に位置づけることで、漫画家としての高い演出力を発揮しています。71年記事を読む限り、「多角形コーナリング」はどちらかというと遅い前走者を抜くためのラインどりの工夫のようです。さらに、慣性ドリフトその他の劇中のコーナリングテクニックは全く架空のものとは言えないにせよ、サーキットでレース用のグリップ力の高いタイヤでは「そんなテクニック使わないほうが速く走れる」ものだったようで、これも勝負を演出するガジェットだったと言えそうです。  そこは池沢氏も理解していて、劇中で主人公のライバルに「ドリフトコーナリングで責め立てられても、結局はグリップ走行が勝つ」と言わしめてもいます。  それにしても漫画は読み返し、元ネタとなる資料を探すことで何かと発見があるもので、そういう要素をたくさん含むのも、名作の条件かもしれません。このあたりは、宇宙戦艦ヤマトのSF設定に参画した豊田有恒氏も認識していたようで、まったくの架空ではなく、仕組みや名前に(ある程度でも)実在、既知のものを使うことで、読者・視聴者が後にそのことに気づいてくれ、作品をあらためて評価、記憶してくれる効果があると、自身の体験にも基づいて述べています。  ただ、これは文学や映像、音楽その他、表現全般に言えるようで、本歌取りやモチーフ、引用が効果的であることの根本的原理のようでもあります。よって、写真表現においても適用できると思いますが、私は意図してその表現技法が使用できるわけでもなく、結果的にどうやらそのようなものになっていたようだ・・・というのが関の山、というところです。

ポルシェのケツ鑑賞

ポルシェのケツ鑑賞

 著名なデザイナーさんの遺品が美術館に展示されてまして、なかなか魅力的です。有名なポルシェの人気車、911カレラRS。73年式の「ナナサンカレラ」と呼ばれるクルマで、漫画「サーキットの狼」でも主人公のライバルが乗りこなしてます。  もともとレース用途を想定したクルマで、レーシングバージョンにはRがもうひとつついて、カレラRSR。さらにそれにターボチャージャーを装着し、競技規則に合うように排気量を2.14リットルに縮小したのがカレラRSRターボで、「サーキットの狼」中盤ではラスボス的マシーンでした。  劇中では「ワークスで戦い抜いた車をそのまま取り寄せた」と語られていますが、史実のRSRターボも、ルマン24時間で二位に輝いた個体がプライベーターに払い下げられ、アメリカのデイトナ24時間、ミッドオハイオ3時間などのレースに出場しているため、劇中の描写もけっこうリアルなものです。 (史実のプライベーターよりも漫画の描写のほうが先行していた)    このクルマのケツに見られるあひるの尾羽のようなフィンは、ダックテールと呼ばれていて、高速走行時に空気抵抗によりクルマにダウンフォースを発生させ、リフトを防ぎトラクションをかせぐとともに、空冷エンジンに外気を大量に導入する清流板の効果もあったとか。  カレラRSRターボは市販車の倍以上の500馬力を発揮するお化けエンジンを積み、このフィンに替えて巨大なウイングが装着され、見た目的にも「お化けポルシェ」となってます。ウイングはこけおどしでなく、直線で300km/hの最高速度を出しても車体が浮き上がらないよう、強大なダウンフォース(つまり逆向きの揚力)により車体を押さえつける目的があって、ポルシェ社としては「市販車のイメージとかけ離れてしまう」ことから、不本意な選択だったともいわれています。  73カレラも、カレラRSRターボも、世界的な人気車であり、youtubeで動画が閲覧できます。RSRターボは4台しか生産されなかった超貴重車両ですから、たとえレプリカであっても一見の価値はありそう。